遺棄に関する犯罪には、次の3つがあります。
・単純遺棄罪(刑法第217条)
“老年、幼年、身体障害又は疾病のために扶助を必要とする者を遺棄した者は、一年以下の懲役に処する。”
ここで言う「遺棄」は、一般的な解釈としては狭義の遺棄、つまり「移置」を指すとされています。
介護・扶助の必要な人を、安全ではない場所(環境下)に移転させることで成立する犯罪です。
現代ではほとんど考えられないケースですが、姥捨て山のような行為がこれに該当します。
・保護責任者遺棄罪(刑法第218条)
“老年者、幼年者、身体障害者又は病者を保護する責任のある者がこれらの者を遺棄し、又はその生存に必要な保護をしなかったときは、三月以上五年以下の懲役に処する。”
ここで言う「遺棄」は、「置き去り」を含む広義の遺棄であると解釈されています。
相手に対して保護責任(保護義務)のある者が、その要保護者(要扶助者)を危険な場所(危険な環境下)に置いたまま立ち去ったり、このままでは危険だと考えられるような状況で、その人に対してなんの保護行為も行わないことで成立する犯罪です。
・遺棄致死傷罪(刑法219条)
“前二条の罪を犯し、よって人を死傷させた者は、傷害の罪と比較して、重い刑により処断する。”
単純遺棄罪や保護責任者遺棄罪に該当する行為の結果、その要扶助者の身体や健康に害が生じたり死亡した場合は、遺棄による致死傷罪として、重い刑が科せられます。
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