刑法で定められた堕胎罪の内容だと、人工妊娠中絶もすべて堕胎罪に該当してしまうように思えます。
しかし、母体保護法というもう一つの法律によって、一定の条件を満たす人工妊娠中絶は堕胎罪を免れます。
母体保護法第14条で定められている、合法な人工妊娠中絶の条件とは、次のものです。
- 妊娠の継続又は分娩が身体的又は経済的理由により母体の健康を著しく害するおそれのあるもの
- 暴行若しくは脅迫によつて又は抵抗若しくは拒絶することができない間に姦淫されて妊娠したもの
これらのいずれかに該当する場合は、人工妊娠中絶が法的に認められます。
ただし、人工妊娠中絶の処置を行うことが許されるのは、各都道府県の医師会が指定する「指定医師」のみです。
人工妊娠中絶を行うためには妊婦本人及び配偶者の同意が必要ですが、配偶者が特定できないときや配偶者が意思表示をすることができないとき、妊娠後に配偶者が死亡したときは、妊婦本人の同意のみで足りるとされています。
注意しておきたいのは、上記の条件に該当していても、妊娠22週以降は人工妊娠中絶は認められないという点です。
妊娠22週以降となると、胎児の成長も進んだ状態であり、倫理的にも母体の健康面においても、いっそう重大な問題とされるのです。
「指定医師」であれば、このことはしっかりと説明してくれますし、妊娠22週以降の中絶手術は、たとえ妊婦からの依頼があっても受け付けることはありません。
もし、妊娠22週以降でも中絶手術ができると言われたら、それは違法な医療行為を行う闇医者だということです。
「指定医師」以外の者に中絶処置を依頼したり、妊娠22週以降の中絶処置を依頼して、人工妊娠中絶を行った場合は、処置を行った者だけでなく、処置を依頼・承諾した妊婦本人も堕胎罪に問われることになるので十分注意しましょう。
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